皆もすなる「FileMaker 資格認定」といふものを

皆もすなる「FileMaker 資格認定」といふものを、我もしてみんとてするなり


受けてみました、FileMaker 資格認定。先々週に Developer Essentials for FileMaker 10、先週に Developer Essentials for FileMaker 9 という、バージョン逆行の変則パターンで受けました。

結果は、幸い、どちらも合格。最初の Developer Essentials for FileMaker 10 の時は、試験の情報が全くなかったこともあって不安もありましたが(落ちると洒落にならない、笑)、とりあえずクリア。2回目の試験は様子も分かったので、こちらは余裕がありました。

「14日再試験ポリシー」によって、14日間は再受験できませんが、これは同じ試験を受ける場合の制限。2回をあいだ4日で受験しましたが、別バージョンの場合には関係ありませんでした。ちなみに、日本語と英語は試験番号が異なるので、ひょっとして受けられてしまうのかな? 日本語、英語どちらも堪能な方は、(万一落ちた場合は)お試しください。

これに合格すると、「FileMaker x Certified Developer」(xはバージョン番号)のロゴを使って良くなったり、FBA メンバーの会社だと FileMaker 社サイトの紹介ページにバッチのマークが出るようになるそうです。

米国ではこの試験の実施がかなり先行していたため、FileMaker Developer Conference では、かなり多くの人がバッチを付けていたりします。そのため、何となく「実質的にはエンドユーザのための認定資格」という先入観を持っていたのですが、"Certified Developer" なので開発者の認定資格なのですよね。

今年は「今までとは違うことに挑戦する」という目標を掲げたこともあって、手始めに身近な資格を受けてみたのですが、いろいろと感じるところがあったので、つらつらと所感を書いてみたいと思います。

●ビジネス上の効果
他にもいろいろなベンダーの IT 関連資格がありますが、一部を除いては、個人の自己啓発や履歴書の資格欄といった局面でしか役立っていないのが現実ではないでしょうか。開発者としてメリットを感じられるためには、顧客層に資格の価値を認識してもらえるかどうかが基準になると思いますが、ビジネスの現場では、依然として FileMaker の特徴やメリットを説明することが必要な場面も多く、ましてや資格はその存在がほとんど知られていません。資格の訴求効果は、現実には FileMaker コミュニティ内に限られています。

FileMaker 資格認定の守備範囲
ひとつのペーパー試験でチェックできる知識には限界があります。システム開発のような複雑なプロジェクトでは、ソフトウェアの知識は必要な要素のひとつに過ぎません。カンナやノコギリ、あるいは重機の使い方にどんなに詳しくても、家を建てるというプロジェクトを遂行する力の証明とはならないことと同じです。
たまに「FileMaker から認定を受けています」といったアピールの仕方を見かけますが、「FileMaker 内部の機能の知識について」という説明がないと誤解を招きかねません。FileMaker という特定ソフトウェアの使い方の試験ですから、あくまでもその視点で評価すべきものだと思います。

FileMaker 社も大変だなーと思う点
データベース専業会社になって以来、FileMaker 社の売上は単一の製品ファミリーの売上に依存しています。ユーザからバージョンアップの頻繁さ、内容の小刻みさを非難する声を聞くことがありますが、ビジネスとして製品を提供しつづけるためにはやむを得ない部分だと思います。資格制度や教材作成には、収入源の多角化という動機もあるはずですし、それは別に悪いことではありません(嫌なら受けない、買わない自由がある)。
あと、FileMaker は「使いやすさ」を標榜するソフトです。多機能になってはきていますが、出題する問題を多数準備するのは大変だろーなと。

●試験内容はオープンにすべし
試験を開始しようとすると、内容を口外も議論もしてはいけない云々といった規約画面で出てきて、承諾しないと先に進めません。この点については、異議を唱えたいと思います。
資格試験は、FileMaker 社が「FileMaker開発者はこういう知識を持つべき」と考えているという指標になるべきものです。試験対策をして要領よく受かろうとする人がいても、FileMaker の開発に必要な知識が問われるようになっていれば、問題ないはずです。指標がオープンになり、それに向けて努力する人が増えれば、業界全体の水準向上にも寄与するでしょう。
FileMaker の資格試験を受ける人は、ほとんどが FileMaker 開発者/ユーザで、社会人でしょう。貴重な時間を使うのに、やみくもな勉強しかできない資格では敬遠されてしまうでしょうし、方向性を間違えて無駄に時間を費やす人も出るでしょう。
資格者が増え過ぎて、資格価値のインフレが起こるなら(喜ばしいことでしょうが)、機能+αのより高レベルの資格を追加すれば良いのです。FileMaker 社の売上にもプラスでしょう。

●試験内容について
異議はあっても、約束は約束。残念ながら、書けません。

●試験は受けるべきか?
今まで受けていなかった人が言うのも何ですが、受験をお勧めします。試験を受けるとなれば、自信がない人は必死に努力するでしょうし、自信のある人も「万一落ちたら洒落にならない」と隠れておさらいをするでしょう(→自分、笑)。自己啓発にプラスになりこそすれ、マイナスになるはずもありません。個人負担の場合は 17,850 円也に対する価値観もあるでしょうが。


受けるも受けないも、その価値をどう判断するかも、その人の自由。でも、よく言うにも悪く言うにも、対象を知ることは必要。今回受けて一番良かったのは、(試験内容以外は)思ったことを気兼ねなく言えるようになったことですかね。